デナリ国立公園内滞在中にはたくさんの野生動物たちとめぐり会う機会に恵まれました。そのうちのいくつかを紹介したいと思います。
ホッキョクジリス
いたるところでこのジリスと出会うことができました。
最初見つけたときは遠くで草の実を食べていたのですが、僕に気づくとこちらに向かってきて、周りをすばしこく動き回り、僕のザックや持ち物をいたずらしようとします。
すると、すかさずもう1頭がどこからか猛スピードで突進してきて、にらみ合ったかと思ったら、くんずほぐれつケンカをはじめ、負けた1頭は転げながら逃げて行きました。
騒がしく、ユーモラスで、にくめないやつらです。
道路を歩いていると道の脇から黒いキツネがひょっこり現れました。逃げるかと思いきやそのままこちらに向かって歩いてきます。
ん!? 口になにか咥えていますが・・・
あぁっっ!! ジリスが・・・
しかしこれも自然の掟。きっとこのキツネは自分のこどもたちのところに帰る途中なのでしょう。
ライチョウ
茂みの隙間からライチョウが現れました。
そろそろお気づきかもしれませんが、デナリの動物たちは人をあまり怖がりません。そっとしていれば、人間を気にせずに彼らの生活を目の前で見せてくれます。
そういえば以前日本の立山でみたライチョウも同じような感じでした。
このライチョウはこどもをたくさん引き連れていました。
季節は夏、動物たちは懸命に子育てをする時期です。
カリブー
英語ではレインディア、アラスカではカリブーと呼ばれている動物、トナカイです。 アラスカでは数万の群れとなり季節移動するそうです。そこまで大きな群れは見ることはありませんでしたが、ツンドラで草をはむ姿はいたるところで見ることができました
ドールシープ
急峻な斜面に目を凝らすと転々と白い動物が群れているのを発見できます。
ドールシープと呼ばれる野生のヒツジです。
小さなこどもを連れているのも確認できました。
このような場所で、あからさまに何かにおびえて生活しているようです。
その恐ろしい敵とは・・・
オオカミ
ついに憧れていた野生のオオカミを観ることができました! 鳴き声はよくきいていたのですが。
遠目でしたが、白く大きくて、犬のように舌を出して、素早く走っていきました。
1か月以上デナリに滞在してオオカミを観れたのはこれを含めて2度だけでした。
彼らが暮らすためには質も量もとてつもなく広大な自然が必要であることを感じました。
ムースの親仔
ユーコン編でも紹介しましたが、ムース(ヘラジカ)の親仔です。仲良く草を食んでいました。こちらには気づいていなかったのかゆっくりと観察することができました。
下の写真は双眼鏡をカメラにあてて撮っています。
ムースの母親を怒らせたら命にかかわるほど危険であることは聞いていたので緊張しました。
フェアバンクスのアラスカ大学構内の森にもムースの糞が落ちていたので、アラスカではムースは身近な存在なのかもしれないです。
あるヒグマの親仔
岩と氷の世界、ムルドロウ氷河の上でテント泊をしていました。小雨が降っている朝、寝袋にくるまっていると、斜面の岩がガラガラっと崩れる音がします。また崩れる音がして、今度は動物の鼻息も聞こえてきます。
来たな・・・と思いテントを開けると20mほど離れた斜面の上に親仔のクマがいます!! 母親はこちらに気づくときびすを返して斜面の向こうに行きましたが、ゼロ歳2頭の仔グマはこちらに興味深々の様子で見つめています。やがて仔グマ2頭でじゃれあいながら遠ざかっていきましたが、生きた心地がしませんでした。
が、ここでも彼らは彼らの生活をしているだけでした。ソープベリーと呼ばれる赤い木の実を食べていたようです。
別の親仔
8月末になってブルーベリーなどをひたすら食うヒグマの親仔。太っている・・・
こちらはバスの車内から撮っています。これはかなり近かったですが、デナリではバスで移動すれば大体ヒグマは観ることができました。
このように間近で動物の行動を観察できる背景にあるのは、動物の方も人間を見慣れているのです。デナリでは毎日たくさんの観光客がバスに乗って通ります。ある意味では自然の状態ではないのかもしれません。
一見おとなしく、簡単に見ることはできますが、彼らが猛獣であり人間以上の力を持つ存在であることは決して忘れてはいけないと思います。
ジリスの家
このジリス、最高のロケーションの中で暮らしているなぁ。
ジリスたちは、ツンドラの地面に巣穴を掘り、何かあるととっさに隠れてしまいます。
澄んだ大空を見上げると、悠然と翼を広げ、大きなイヌワシが旋回していました。
秋のツンドラ たたずむムース
巨大な角を頭にのせたオスのムース。体重800㎏にもなる巨獣が繁殖期を迎え、角をぶつけ合うのはこれからです。
デナリでは、毎日のように動物との出会いがありました。広大な自然が手つかずで残っていること、ツンドラなので果てまで見通しがきき発見しやすいこと、動物が人間をあまり恐れないこと・・・いくつかの条件が重なっているからでしょう。
ヒグマもカリブーもオオカミも、彼らが生きていくためには、その背景に考えも及ばないような豊かで広い大地が必要です。数が少なくて貴重だからとか、大きくてかっこいいからというだけではなく、その生き物の背後にある生命の広がりを考えたときに、本当の素晴らしさがわかるような気がします。
かつてはデナリよりも我々人間の多くが暮らす温暖な土地の方がはるかに多くの動物たちが暮らしていたはずです。彼らはどこに消えてしまったのでしょうか・・・
失ったものを思うと寂しくもありますが、まだアラスカの大地では彼らがたくましく生きているのも事実です。今こうやってパソコンの画面を見つめているときでも、オオカミやカリブーはツンドラの大地を駆け回っているのでしょう。
これだけの世界がまだ残っていることを実際に体験し知ることは、この旅で得たとても大きなことだったと思います。そのあとの生き方を左右するくらいに・・・